この記事をザックリまとめると…
- 日本人の乳幼児は、世界の他の国々の子どもたちよりも睡眠時間がとても短い
- よい睡眠の取得で脳は発達し、人としての土台が築かれる
- しっかり寝ることが心身の病気の予防や子供のポテンシャルを最大化することに繋がる
2010年にSleep Medicine誌上で、17カ国/地域の総勢29,287人の新生児から3歳までを対象にした1日の睡眠時間の調査結果が発表されました。
とても不名誉なことに、その中で一番睡眠時間が短いのが日本でした。日本の乳幼児の平均睡眠時間は11時間37分で、トップのニュージーランドに比べると1時間41分も短いということが判明しました。この調査に協力した872人の日本人の乳幼児の就寝時間が21時17分と遅寝なのに、その分の時間を補填できていないという状況だそうです。

私の周りでの話ですが、アメリカ人や外国人のママさんと話をしていると、子どもの就寝時間は 19時から20時くらいの間というのが最もよく聞く答えですが、日本人のママさんからは21時や22時などと聞くことも珍しくありません。やっぱり 上記の調査結果は間違えではないようです。日本の仕事環境や、それに付随する生活環境に大きく起因しているところがあると思いますが、何とか改善させていきたいところですよね。
「睡眠」は親が最初に子どもに教えるしつけ
睡眠は子どもの身体の成長は勿論のこと、脳の発達にも密接に関係しています。
特に沢山眠る時期である乳幼児期の睡眠を軽視していると、後々の子育てで苦労する可能性があります。逆にいえば、この時期の睡眠をしっかりサポートしてあげることが、長い目でみた育児においての時短に繋がります。
睡眠に問題を抱える子どもたちに寄り添い、長年睡眠を研究している三池氏によると、夜ふかし・遅寝に陥りやすい最初の時期が「乳幼児期」だそうです 。三池氏の著書『子どもの夜ふかし 脳への脅威』では、夜ふかしが、登園時の行き渋り、そして集団生活を元気に楽しめない、というネガティブなスパイラルへの第一歩であるとしています。そういった生活習慣が改善されぬままだと睡眠不足になり、慢性的に睡眠不足の子どもが不登校状態に陥り、最終的に引きこもりになってしまうケースもあると紹介しています。そして、一度そうなってしまうと、元に戻るのは容易なことではなく、様々な事例を紹介しています。
そこでBabyfulでは時短育児の第一ステップとして、睡眠を重要視することを提唱します。将来のマイナス要素を取り除くとともに、人としてのポテンシャルを最大化することができると考えます。
脳の発達には順序がある
誕生時点では大人の約1/3程度の重さである赤ちゃんの「脳」。要素としては大人と同じものが生まれながらに備わっているそうです。The Institutes for Archievement of Human Potential による脳科学の研究にて、じっくりと数年かけて、脳の一番低いレベル(延髄)から最も高いレベル(成熟皮質)まで、順を追って機能するようになることが判明しています。
この脳を育てることにおいては守られるべき順序とバランスがあり、”寝ること、起きること、そして食べることとからだをうまく動かすことを司る「からだの脳」(主に大脳辺縁系、視床、視床下部、中脳、橋、延髄などを指す)”を最初にしっかりと育てることが重要です。
小児科専門医で脳科学の研究者でもある文教大学教授の成田奈緒子先生によると、まず「からだの脳」(下の絵の①)をしっかり育んだ後で、「脳」と聞いたときに通常思い浮かべる勉強やスポーツを司る部分(主に大脳新皮質、絵の②)が育ち、その後、「こころの脳」(絵の③)が発達していくそうです。

子育ての最終目標である、「立派に社会で活躍する大人」へと育て上げるためには、乳幼児期から脳育ての順番を守り、なんといっても土台である「からだの脳」育てをしっかりとする、ということがいかに重要かが分かりますよね。
睡眠を客観的に学びましょう‼
とはいえ、子どもの睡眠こそが親になって一番真剣に悩む出来事だと思います。
寝ない子どもを「今だけなんとか我慢して乗り越えれば…」と時が解決してくれるのを待って、我慢して過ごしている方も多いと思います。添い乳して寝かせる、抱っこしてゆらゆらして寝かせる、ドライブして寝かせる、などその時点では有効な寝かせ方も、子どもの成長に伴っていつかは限界がくる時がきます。
勿論、月日を重ねると共に、長時間寝てくれるようになったり、寝つきがよくなったりする子も出てくると思います。ただ、運任せ、というのではなく、親がうまくガイドしてあげることができれば、睡眠に関するストレスを我慢する時期を短くすることができるはずです。
「どうして眠るのか、睡眠の目的」。そして、「眠っている最中に赤ちゃんの中で起こっている出来事」。また、「眠くなる身体の仕組み」を知ることで、赤ちゃんがより眠りやすくなるようにサポートでき、眠らせることへのストレスが減って行くことと思います。今後数回にわたり、睡眠の謎についてリサーチした内容をなるべく分かりやすくお伝えしていきたいと思います。
よく眠ること、これがよく成長することにつながります。
Babyfulで、一緒に時短育児をしていくパパさんママさんには、是非睡眠への意識を高めてもらえたら、と思います。そして、赤ちゃんの睡眠時間が世界一短いという状況を脱出して、よい睡眠習慣を育んでいきたいですね。
参考サイト&参考図書
- Mindelle JA, Sadeh A, Wiegand B, How TH, Goh DY.T (2010) Cross-cultural differences in infant and toddler sleep, “Sleep Medicine” 11, pp. 274-280
- 成田奈緒子 (2011) 「脳と心の発達メカニズム 指導用スライド教材 I」東京都教育委員会
- 成田奈緒子 (2014)「子ども達の脳と体の発達」母子健康協会
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