この記事をザックリまとめると…
- 体温・脳・ホルモン分泌など、眠る為に体の状態は変化する
- 体に起こる変化を知り、それを手助けすることで上手に眠りを促せるようになる
- 遅寝の罠に陥らず、早寝早起きをすることで体内時計をしっかりと保つことが大切
以前の記事で睡眠の目的を見てまいりましたが、この記事では眠っているとは覚醒時とどう違うのか、眠りのメカニズムに迫ります。それを知ることで、赤ちゃんを眠らせてあげやすい環境作りを考えていきましょう。
眠るとはどういう状態か
眠くなってくると、私たちの体には大きく3つの変化が現れます。体温の変化。脳の活動モードの変化。そしてホルモンの分泌です。それぞれ、詳しくみていきましょう。
1. 体温:深部体温が下がり、皮膚温度が上がる
一口に体温といっても、体の内側の体温(深部体温)と体の表面の体温(皮膚温度)とのに種類があります。覚醒時には深部体温の方が皮膚温度より2℃ほど通常高くなっています。これらは「筋肉や内臓による熱産生」と「手足からの熱放散」によって調節されています。
覚醒時には深部体温を上げて体の活動を維持し、睡眠時は温度を下げて臓器や筋肉、脳を休ませます。つまるところ、眠るとは脳 (深部体温) の温度を下げるという作業です。
これはPCを思い浮かべると全く同じなのですが、長時間駆動していると、PCが熱くなってきて、処理能力も遅くなってきますよね。そこでリセットをかけてあげると処理が元に戻る。PCの場合も、CPUは自身で熱処理ができないので、ファンを内臓してそれで熱い空気を放熱していますが、私達人間も同じということですね。
手足がポカポカとあったかくなってきたと同時に眠くなってきた、というのを体験している方も多いかと思いますが、これは、まさに深部体温を下げるために体内の熱を手足から放熱することで体が眠る準備を始めているということなのです。
実際、深部体温と皮膚温度の差が小さくなればなるほど、眠気が強まるそうです。

また、眠気を感じてからベッドに入った場合と手足が温かくなっている状態でベッドに入った場合とを比べたところ、手足が温かくなっている状態でベッドに入った場合が入眠までの時間が一番短いことも証明されています。
2. 脳:リラックスモードに変化
私たちの体は自律神経の働きによって、体温を維持し、心臓を動かし、呼吸し、消化し、ホルモンや代謝を調整するということが可能になっています。この自律神経は「交感神経」「副交感神経」のどちらかが絶えず30%ほど優位になって働いています。
基本的に、覚醒時は交感神経が優位で、それにより、脳は緊張感と集中力を増します。逆に、睡眠時はリラックスモードの副交感神経が優位になっています。
つまり、夜になってスムーズに副交感神経優位の状態に交代することができれば、寝つきがよくなります。逆に脳が興奮している状態だと、体は疲れているのになぜか眠れないという状態になってしまいます。思考を止める、また五感からの刺激があまりない状態にしてあげるというのがキーになりそうですね。
3. ホルモン:メラトニンが分泌される
夜になると、脳の奥深くにある「松果体」というところから、眠りのホルモンと呼ばれるメラトニンが分泌されます。メラトニンが分泌されることで、私たちは眠くなり、眠ることができます。
メラトニンは朝起きた時間から15-16時間後に分泌されます。ただし、光によって分泌が抑えられるため、夜でも明るいとその分泌が抑えられてしまい、疲れているはずなのになぜか目が冴えて眠れないということが起こります。
メラトニンは赤ちゃんの時に沢山分泌され、歳をとるにつれてその分泌量が減っていきます。子どもは一度寝ると何をやっても起きないのに、歳をとるにつれて夜中に何度も目が覚めるようになってしまうなどというのはこのメラトニンの分泌量の違いによるものです。

光によって分泌が抑えられる作用をもつメラトニンですが、うまく利用すると目覚め・眠りの質が上がります。それというのも、朝起きてすぐに太陽光を浴びることでメラトニンの分泌を抑制し、覚醒させることができます。眠くて布団から出られない、という時にも少し頑張って日光浴をするとすっきりと目覚めることができます。
また、昼間の受光量を増やすと夜のメラトニン分泌量が増える効果がある為、その夜にはぐっすりと眠ることができます。
光はその強さ (照度) をlx (ルクス) という単位で表すことができるのですが、例えば家の中はJIS照度基準で推奨されている値を見ると、基本的には100lx程度、食卓は300lx程度です。職場や学校などにもJIS照度基準が設けられており、明るいオフィスでは1,000lx程度、細かい作業をする工場では1,500lx程度です。それが太陽光となると、曇りの日の屋外ですら3,000lxはあり、晴れていると数万lxという単位になります。いかに太陽光が強いのか、この数字からも納得いただけるかと思います。
全てをコントロールする体内時計

上記で説明した覚醒・眠りというリズムは、私たちの体内時計によってコントロールされています。体内時計は、皮膚、筋肉、心臓、血管、リンパ、臓器など私たちの全身にはりめぐらされているのですが、脳の視床下部の視交叉上核にある「脳時計」によってコントロールされています。
私たち人間は太陽が出ている昼間は覚醒し、夜になって暗くなると眠り、朝になって朝日を浴びると目覚める、というようにできています。体内時計は実は24.2時間(『スタンフォード式最高の睡眠』p.174)で一周しているそうなのですが、朝日を浴びることでリセットして、地球が自転で1回転する24時間に同調させています。
よって、この朝日によるリセット作業をしなければ私たちは自然と毎日寝る時間が遅くなり、夜型の生活に陥りやすくなっています。
『子どもの睡眠』によると、新生児にはまだこの体内時計ができていないので、昼夜眠り続けるそうです。生後1-2ヶ月ほどで体内時計が作られ始め、3-4ヶ月すると体内時計を24時間に同調させることができるようになります。
スムーズに寝かせるためにはどうすればよいか
上記を踏まえて、スムーズに寝られるようにするにはどのようにすればいいのか、ポイントをまとめます。
- 体温の変化に注意し、手足が暖かくなってきたら寝られる環境を提供する
- 手足からの放熱がうまくいくように、部屋が暑すぎない・湿度が高すぎないよう設定する
- 眠る前には興奮させないようにする
- 真っ暗を演出する
- 朝日を浴びてスッキリと覚醒させる
- 日中に太陽光をしっかり浴びる
- 生活リズムを整える(毎日同じ時間に起床・就寝するようにする)
覚醒・眠りのメカニズムを知ったことで、上記のポイントもスムーズに理解して日々の生活に取り入れていただければ幸いです。
眠りやすい環境作りについては、体験談や使用したアイテムなども含めて具体的に別記事で紹介しいていきたいと思います。
参考サイト&参考図書
- Krauchi, K., et al. (1999) Warm feet promote the rapid onset of sleep. “Nature”, 401, pp. 36-37
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